こんにちは、anmiです。
東京生まれ末っ子。母の大きな愛の下育てられました。
元々はおばあちゃん子、いや、今も。
祖父は能楽師。書斎には棚一杯のお能のVHS、お面や着物。
お弟子さんもいて、会も開いていた。偉大な人です。
彼の子供は三姉妹。跡継ぎの息子はいなかった。
私は稽古をつけてもらった事が記憶に一回。
畳に正座をしながら謡(うたい)の稽古を受けた。お遊び程度に。
打って変わって待望の男子の初孫だった私の兄はしっかりと稽古をつけられた。
舞台にも立った。私よりもずっと祖父との時間が長かった。
祖父には海外への野望があったらしい。
お能の道には進まなかったものの、兄はそんな野望も引き継いで、単身海外に飛び出した。
私は当時高校生。空港に向かう車を見送りながらぼんやり手をふった朝の不思議な気持ち。
寂しいとか、羨ましいとかではなかった。
あれは焦燥感だったのだと思う。
その日から私の生活から兄はいなくなった。数年後一時帰国するまでは。
家に帰ると居間に座っている彼をみるのはなんだか不思議な感じ。
録音した自分の声を聞く程不思議。
少し話してみると変わっていない彼だが、言葉の深さは増していた。
色々あったのだろうなと感じさせる。
嵐の様にやってきてまた去っていく。
気づけば私も日本以外の生活を自然と意識する様になっていた。
ありがたくも東京の芸大を卒業させてもらい、その後アイルランドへ飛んだ。
東京から乗り継いで15時間、そして
もう簡単には帰れない事実を後押しする様な
何も見えない真っ暗な広原を走るシャトルバスでの3時間、
冷たい鉄ベンチが並ぶバス停に到着。
日本の世界地図だと左端のさらに端。
曇りだらけな愛溢れる街、Galway。
この小さな街でも沢山の出会いがあり、その経験から新しい野望ができた。
2年後私はイタリア、ミラノへ飛んだ。
そして今年13年目。
雨が続きながらもやっと春らしくなり始めたミラノ。
羽織るトレンチコートは祖父の形見。
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では、おやすみなさい。